子宮・卵巣がん

子宮がん

婦人科のがんで最も多いのは子宮がんです。子宮がんは子宮頸がんと子宮体がん(子宮内膜がん)に分けられ、その性質はまったくことなります。

子宮頸がんは子宮頸部(子宮の下方)から発生するもので、その発病に先立って「異形成」という段階を経ることがわかっています(前がん状態とも呼ばれます)。この異形成を子宮がん検診で適切に発見し、管理することでがんへの進展はほぼ防ぐことができます。がんに近づいた状態の異形成が認められた場合は、「子宮頸部切除術(円錐切除術)」という比較的簡易な方法で病巣の完全な摘除が可能です。子宮を失うこともありません。また、この発病・進展にはパピローマ(HPV)というウイルスの感染症が大いに関係しており、若年女性にはワクチンを投与することでがんの発生を大幅に減らすことができると考えられます。

子宮体がんは子宮内膜がんとも呼ばれるように、胎児を育てる子宮の内側にある、子宮内膜から発生するがんです。閉経後の女性に多く(それより若年の女性にはないというわけではありません)、この年代の女性に不正出血を認めた場合は疑ってかかる必要があります。早期に見つかれば完治する可能性の高いがんであり、不正出血をみたら必ず検査を受けてください。

また、子宮体がんにも「子宮内膜増殖症」という前がん病変があります。出血などの症状があることも、子宮がんの検査でたまたま発見されることもありますが、これが疑われる場合は内膜掻爬(組織診)という検査で確定診断をおこなう必要があります。

まれに子宮頸がん、子宮体がんとはまったく性質の異なる悪性腫瘍が子宮の筋肉の層から発生することがありますが、これは子宮肉腫といってまた別の疾患です。

卵巣がん

卵巣がんは、卵巣から発生したがんです。卵巣から発生する腫瘍(しゅよう)には良性と悪性、そしてその中間的な性質を持つ境界悪性というものがあります。卵巣に腫瘍ができたからといって、必ずしも卵巣がんとは限らないのです。卵巣がんは、すべての卵巣腫瘍の中で2%程度の頻度であるといわれています。

卵巣がんは進行すると、おなかの中にがんが広がる腹膜播種(はしゅ)が生じやすくなります。また、胃から垂れ下がって大腸・小腸を覆っている大網(だいもう)やおなかの大血管の周りにある後腹膜リンパ節、大腸、小腸、横隔膜、脾臓(ひぞう)などに転移することもあります。

卵巣がんは初期症状に乏しい場合も多く、発見されたときには進行していたというケースもよくありますが、検診などの際に偶発的に早期に発見されることもあります。もし卵巣の腫れを指摘された場合は、放置せずに診察を受けてください。卵巣がんは初期であればほぼ完治しますし、仮に進行例であったとしても手術や抗がん剤で病気に対応できる可能性は充分にあります。

当院の子宮・卵巣がん等に係る手術等実績

子宮頸部子宮頸部切除術34
子宮頸部・子宮体部子宮悪性腫瘍根治手術11
卵巣卵巣がん根治手術5
(2021年実績)

主な病態および対象疾患

悪性卵巣腫瘍

腫瘍が発生しても初期には自覚症状が乏しく、40~50%の症例は腫瘍が腹腔内臓器や腹膜に播種したⅢ-Ⅳ期で発見されます。

境界悪性腫瘍

多くは早期症例で、再発しても潜伏期が長く予後は良好です。

腹膜がん・卵管がん

進展様式は卵巣がんと同様に隣接臓器や組織への播種を主体とします。

転移性卵巣がん

治療は原発臓器のがんに準じますが、圧迫症状があれば切除を検討する場合もあります。

前がん病変(子宮頸部異形成)

若年者に増加傾向があり、妊孕性の温存を考慮した子宮頸部切除術(円錐切除)が検討されます。

前がん病変(子宮内膜増殖症)

内膜掻爬による体がんの除外診断が必要です。

子宮頸がん

女性性器がんの中でもっとも頻度が高く、細胞診による検診での早期発見により死亡数は減少傾向にあります。

子宮体がん

高齢者に多い疾患ですが、若年者に発症することもあります。

子宮肉腫

良性の筋腫との鑑別が難しく、摘出子宮の病理組織検査で診断されます。

当院での診療の特徴

  1. 画像診断、腫瘍マーカーにより良性の可能性が高い場合には、腹腔鏡での腫瘍摘出ないしは附属器切除をおこないます。 境界悪性ないしは悪性腫瘍が疑われる場合には、術中迅速病理検査下に開腹手術をおこないます。
  2. 境界悪性・悪性卵巣腫瘍の基本術式は両側附属器摘出、子宮全摘出、大網、虫垂切除で、さらに播種病巣の切除や後腹膜リンパ節切除をおこないます。 消化管や腹腔内充実臓器の連携により消化管・肝・脾切除などを併せておこなうこともあります。
  3. 個別化された化学療法をおこないます。 Ⅲ-Ⅳ期、再発症例には分子標的薬の投与も併せておこなっています。
  4. 手術で充分な切除をおこなうことが困難な場合には、化学療法を先行させた後に手術をおこなうこともあります。
  5. 若年で境界悪性ないしは早期の悪性腫瘍症例には妊孕性を温存した手術・化学療法をおこなっています。

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