胃がんは胃に発生する癌で、2021年がん死亡数の統計で、男性で3番目、女性では5番目に多いがんであり、近年減少傾向と言われていますが、いまだに多いがんではあります。胃壁の最も内側の粘膜から発生し、徐々に胃壁深くに侵入して大きくなります。胃壁の血管やリンパ管の流れに乗るとリンパ節や肝臓・肺などほかの臓器に転移します。さらに胃壁の外側に露出して腹腔内に散らばったり(腹膜播種)、他の臓器に直接浸潤していきます。
胃がんの原因としては、ヘリコバクター・ピロリ菌の影響があります。ピロリ菌の感染により、慢性の胃炎をきたします。潰瘍などの原因になるほか、胃がんの原因にもなっています。
胃がんの症状ですが、早期の段階ではほとんどないうえ、ある程度進行しても乏しいこともあります。代表的な症状は、がんから出血することで吐血や下血(口から血を吐いたり、黒または赤黒い便が出ること)や貧血をきたしますが、この症状は良性の潰瘍などでも起こりうる症状です。がんが大きくなると内腔が狭くなるため食物の通りが悪くなり、嘔吐をしたり、食事が摂れなくなります。その他、お腹が張る、お腹が痛い、体重が減る、などが挙げられます。
胃がんが疑われる場合は上部消化管内視鏡検査をおこないます。胃がんの診断がついた場合は、がんがどれくらい進行しているか(病期)を評価するため、CT検査やMRI検査などをおこないます。
治療法には、内視鏡手術、外科手術、化学療法、支持療法などがあります。病期や体の状態などを評価したうえで、最も適した治療法をおこないます。
当院での診療の特徴
内科領域
上部内視鏡検査、腫瘍の内視鏡手術をおこなっています。上部内視鏡検査で胃がんの診断をおこないます。胃がんが、ごく早期(リンパ節転移の可能性がほぼない段階)と判断した場合、内視鏡手術(内視鏡的粘膜下層剥離術:ESD)をおこなうことで治癒が望めます。
症状がまだない早期がんの段階で胃がんを発見するには検診やドックが重要です。症状のある状態で診断された胃がんでは、進行しているケースが多くなります。進行して肺や肝臓の病変が先に指摘され、精密検査で胃がんが診断されることもあります。検診やドックで要精検(精密検査)を指示された方、気になる症状がある方は早めに消化器科にご相談ください。尚、ヘリコバクター・ピロリ菌の検査・除菌治療もおこなっています。
外科領域
内視鏡的治療の適応外の早期胃がんに対しては、腹腔鏡下胃切除術の適応で、当院でも積極的に施行しています。 進行胃がんに対しては、手術(幽門側胃切除、胃全摘)をおこない、必要に応じて、術後補助化学療法を施行しています。
近年、化学療法の進歩により奏功例も多く経験するようになっています。 切除不能な進行がん、再発がんにおいても胃空腸バイパス術などの経口摂取をめざした緩和手術も症例に応じておこなっています。
当院の胃がん等に係る手術等実績
開腹手術 | 6 |
腹腔鏡手術 | 14 |
内視鏡手術 | 40 |